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石山テクノ建設株式会社はあらゆる構造物の補修・補強・耐震工事を通じてインフラを守る環境保全企業です。

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〒601-8468 京都市南区唐橋西平垣町38番地1

随想 第七回 「公募と言う名の不平等」

 わが国では、マンション居住人口が1000万人を超えました。
 平成12年で約390万戸近くのストックがあり、その内、築30年を経過した老朽マンションが100万戸に達しているといわれています。
 このことを反映して、最近マンションの大規模修繕が増えてきました。
 法律の整備も進み、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」が平成12年に制定され、国家資格である「マンション管理士試験」と「管理業務主任者試験」が平成13年度(2001年)から実施されました。
 わが社も15年度に両資格を取得しました。
 建設業界は新築工事が減少する中、改修工事やリフォームに販路拡大を求めています。
 これらの動きの中で、「気にかかること」を体験しましたので、大規模修繕工事などを計画されている方々の参考になればと考え、それをお伝えしたいと思います。  先日、某マンションの大規模修繕工事の「公募」がありました。
 この棟の管理組合には、組合員の中に専門家の方がおられないらしく、設計事務所にコンサルタントを依頼されました。  その設計事務所が「公募」という手段をとったために実施されたものです。
 応募条件には「資本金3000万円以上、5000万円以上の改修実績元請経験が1年間に3件以上……」となっていました。わが社は資本金1000万円で、そのうえ改修元請実績も当条件にはとても及びません。
 スパッと"あしきり"です。ところが、わが社はここの別棟で、大規模修繕工事の元請実績があったため、「自治会推薦があり、ぜひ応募してほしい」との要請が当設計事務所からありました。
 わが社に期待して下さる方の思いが大変有難く、「不適格業者」ではありますが応募することにしました。
 しかし、私はこの「公募」方式には疑問をもっていました。それは、「その条件に当てはまる業者が本当に良い業者なのか?」と言う疑問です。  会社規模の大小は企業間競争には関係が無いはずです。
 問題は技術で、管理技術や施工技術を競うのが本筋ではないか、と思ったからです。
 小さな会社でも技術力が高く誠実で、頑張っている業者はたくさんあります。
 どれほど優秀な起業家が設立した会社でも、初めから売上や実績があるはずはありません。
 だからこそ、その会社の社長の姿勢を見、過去の経験に照らし合せチャンスを与える必要がある、と思うのです。
 そうしなければ正しい競争が生まれず自然淘汰も起こらないので、社会が良くならないのではないかと考えてしまいます。
 この「公募条件」は正に、お役所仕事に似た、間違った実績主義と、ことなかれ主義の入札参加資格のように感じたのです。
 この改修工事の設計仕様に、「タイル面全面を弱酸洗いする」とか、竣工後、10年程度のこの建物で「シングル葺きを全面、同一材で葺き替える」とか"やり過ぎでは"と思う項目がありました。
 建物を美しくするため、「弱酸洗い」となっていますが、弱酸でもモルタルやコンクリート成分を侵します。
 細かいひび割れから浸入した、弱酸は水分が蒸発すると濃い酸となり、内部鉄筋を侵す危険が増大します。
 「高圧水洗浄で十分では?」と質問書を出しましたが「仕様書の通りとします」との回答がきました。
 また、ひび割れ補修に際して、「耐久性・防水性から見た場合0.2o以上のひび割れ」(「コンクリートのひび割れ調査・補修指針」日本コンクリート工学協会)に対し、わが社は0.1o以上のひび割れに注入工法を用いますが、改修仕様では0.5o以上が注入工法で、それ以下は表面のみの簡易な処理になっています。
(図は、社団法人日本コンクリート工業会編『コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針-2009-』より引用)
 これも「0.5o以上とした根拠を教えてほしい」と質問しましたが、「今回は仕様書とおり…」との回答でした。
 躯体の不具合の根本治療より、見かけの美しさの追求? お金の掛け方が間違っていると思います。
 設計仕様を統一して、各社から見積を取るのは良いのですが、メーカー名までも固定して、「同等品」を認めないのは、一見、比べやすく公平にみえますが、普段そのメーカーのものを使っている会社とそうでない会社とはコスト面で大きな差が出ます。
 「あしきり」の条件と言い、この「仕様」と言い特定の業者に有利に働く仕掛けです。
 設計事務所がコンサルタント業務でもし責任逃れを考えようとすれば、「メーカー保証・施工者責任」が取りやすい「全面葺き替え」とか「シーリング全て打ち替え」仕様になります。
 部分補修を指示した場合に、施工箇所に不具合が生じたとき、監理責任を問われるからです。
 施工業者も「指示された通りしましたよ」と責任逃れをするかもしれません。したがって過大設計になり易い傾向がでます。住民の「適正な価格で、安心出来る工事をしてほしい」想いとはどんどんかけ離れていきます。
 この棟の業者選定方法は、要は「公募」であり所詮「公募」です。
 これで、当設計事務所が請け負った「コンサルティング」業務の主体性が発揮出来ているのでしょうか。
 繰り返しますが、住民の方々は「適正な価格で、安心出来る工事をしてほしい」「設計事務所というプロの目でそれを実現してほしい」という思いで設計・監理を依頼されたのだと思います。
 「公募」は一見「公平・公正」に見えますが、設計事務所がするべき仕事ではないでしょう。
 私が考える本来の設計事務所の姿勢とは、プロの目で、本当に良いと思う業者を3社程度推薦し、推薦理由を明記して、各社自由にプレゼンテーションをさせることです。  それにかかる必要な経費を査定し、参加各社に支払うのです。
 そのことによって、見積合せやヒヤリングを通じて管理組合が業者決定をし易いようにコンサルティングすることができます。
 そうすれば、価格の高低だけで業者を選定することなく、技術力や管理能力を含めた、総合力で判断できるはずです。
 安心・信頼の出来る良い施工業者とは、「調査から設計・提案、施工、報告と、一貫して自社で行う」能力を有している技術力の高い業者のことだと私は思っています。
 「一貫して自社で行う」ことで厳しい責任を業者は負いますので、「過大設計にならず、過少設計にもならず最適な設計」と「丁寧で確実な施工」が出来ることでしょう。
 そして、見積参加業者の推薦をしたからには、その落札業者の施工に対しても設計事務所の明確な責任が発生します。  わが社とお付き合いのある設計事務所はその様な姿勢を持っています。
 「公募」では、「当設計事務所が一面識も無い」けれど「適格」な、様々な業者が応募しますから、最終的には管理組合だけで施工業者を選んだ結果となります。
 不具合が発生したとき、もし設計事務所から「改修設計と業者選定のためのアドバイスをさせて頂いただけです」と言われれば、全て「管理組合の責任」になりかねません。
 落とし穴に要注意です。



石山テクノ建設株式会社 代表取締役 石山孝史


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