「迫り来る震度7」その1 震度7と大震災

迫りくる大地震と大震災

  現在の2023年からちょうど100年前の1923年(大正12)年9月1日正午2分前にマグニチュード7.9と推定される巨大地震の大正関東地震が発生し、南関東から東海地域に及ぶ広範囲な地域で未曾有の甚大な災害となりました。  「東京駅前の焼け跡、日本橋方面」  出典:気象庁ホームページ(関東大震災 写真集)より引用

 この災害は「関東大震災」と呼ばれます。

 関東大震災は、東京での直下型大地震のように思われがちですが、相模トラフを震源とする海溝型地震です。 神奈川県から千葉県南部を中心に震度6強~7の地域が広範囲にわたり、その範囲は1995年の阪神・淡路大震災の10倍以上に達する大規模広域災害でした。

 死者105,385、全潰全焼流出家屋293,387に上り、電気、水道、道路、鉄道等のライフラインにも甚大な被害が発生しました。当時の国家予算約14億円に対し経済被害は約55億円にも上ります。

 死者約10万人は、当時の人口が約6000万人で現在の総人口との比で換算すると約22万人となりますが、現代の被災地域周辺での人口比では約80万人にも及ぶすさまじい大震災でした。

 大震災と呼ばれる震災は、1923年関東大震災以降に、1995年阪神淡路大震災、2011年東日本大震災が発生しています。 近年地震活動が活性化した日本では、東京・名古屋・大阪の大都市圏で大地震が発生することは否定できず、その他の都市圏も同様で、都市圏で直下型大地震が発生した場合は、街が破壊されつくします。 東海・東南海・南海トラフで連動した地震が発生すると、東日本大震災を超える壊滅的な被害が広範囲に及びます。

 過密化した現代の大都会が大地震に襲われると、電気、ガス、水道をはじめ、道路、鉄道などの交通設備、電話やインターネットといった通信サービスなど、生活基盤となる設備やサービスが使用困難となり、多くの帰宅困難者が生じ、建物や家屋で火災や倒壊による人的被害が甚大化します。

 迫りくる巨大地震に立ち向かう姿勢として「自分の身は自分で守る」、「自分たちの地域は自分たちで守る」、「これに足りない部分を行政機関が補う」考えを持ち、地震に備えることがとても大切です。

【ご参考】

内閣府 防災情報のページ「関東大震災100年」特設ページ

気象庁「関東大震災から100年」特設サイト

マグニチュード(M)

地震が発するエネルギーの大きさを表した指標です。

マグニチュドの数字の1の違いは、エネルギーが32倍ほどの違いになります。

そのエネルギーが地中深くより伝わって地表面を揺らしますので、地震のエネルギーが大きいほどに、震源に近いほどに、激しく揺れることになります。

「出典:地震調査研究推進本部」防災・減災のための素材集より引用

 

震度7は、最大級の被害をもたらすもの

 震度は、ある場所における地震の揺れの強弱の程度を表すもので、その地震のゆれの大きさを表す指標として、日本では気象庁震度階級が用いられます。

 震度7は、現在の10段階の気象庁震度階級での最大震度です。

 1948年(昭和23年)6月28日の福井地震(M7.1)では当時の震度階級で最大震度6でしたが、被害状況からは震度6では適切に表現できないことから翌年に震度7が新設されました。しかし震度は体感による観測により指針にある階級表から判断されろもので客観性が低く時間を要し、更に震度7は「後日の調査により被害状況から判断する」ものでした。

 1996年(平成8年)4月1日の震度階級改定により、体感による観測を廃止して震度計による観測からの計測震度となり、更に震度5と6にそれぞれ「弱」と「強」が追加されて細分化し、現在の10段階の震度階級となりました。

「出典:気象庁 計測震度の算出方法」より引用

 気象庁が発表している震度は、原則として地表や低層建物の一階に設置した震度計による観測値です。

 計測震度6.5以上が震度7ですが、これは兵庫県南部地震で現地調査結果から、震度7の揺れが有ったとされる範囲で観測された強震加速度波形から計測震度を算出すると、6.5前後の値であったことから定義されました。

 震度7は最大級の被害をもたらすものと認識されています。計測震度7.0以上を観測した例が無く、実際どのような被害が発生するか不明確なことにより、震度7が上限の震度階とされています。


「出典:気象庁震度階級の解説」より引用

震度7の地震で、耐震性の低い建物では倒壊が発生する危険性があります。

震度と被害状況に関する参考ページ

気象庁ホームページ:気象庁震度階級関連解説表

にある以下の資料が、震度と被害状況との関係で参考になります。

 大地震が発生すると、大破して使えなくなる建物が数多く発生し、更に弱い建物は倒壊し人を傷つけ殺し、火を噴き大火災が生じ、大都市では破局的な状況が待ち構えています。

 多くの方が大地震の犠牲にならないようにするためには、まずは住宅の倒壊を防ぐことがとても重要です。

 

これから30年ほどは要注意

 過去には、1891年(明治24年)にM8の内陸直下型の巨大地震として、濃尾地震(岐阜県)が発生し、広範囲で震度7の揺れが生じたと見られています。

 関西圏では、上町断層帯等の活断層によるのM7.0以上の直下型大地震が懸念されています。

平成19年版内閣府防災白書に以下の予防対策用震度分布の図が有ります。

近畿圏でのM7.0以上の活断層、M6.9の直下の地震、東南海・南海地震及び東海地震の震度分布を重ね合わせ各地点の最大震度をとったものです。

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震度6強・7の予測エリアが都市圏の住宅密集地に広範囲にわたっています。

震度6弱であっても大阪府北部地震では「一部損壊」が多数発生しました。

地震が活性化している近年では、震災対策をきめ細かく進めて行く必要があります。

日本全国に数多くの活断層が有ります。これらの活断層での直下型地震が発生すると震度6強~7の地震になる危険性があります。

活断層
平成26年版内閣府防災白書より引用

地震に関するより詳細な内容は

「地震防災研究推進本部ホームページ」

が、とても参考になりますので、まだ見られたことが無い方は、ぜひ一度見られることをお勧めします。

主要活断層の評価結果

 

 

今後30年内に震度6弱以上の地震が発生する確率

の文面に、日本の国土の実情が分かります。

 活断層による発生時期の予測が困難な地震以外に、周囲的に必ず発生する巨大地震として、海溝型の東海・東南海・南海地震が有ります。

 このタイプの地震は、内陸型の地震とは比べようのない巨大なエネルギーで、広範囲に地震被害をもたらします。

 「活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」令和5年1月13日

出典:「活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」(地震調査研究推進本部)

 海溝型地震は、プレートの沈み込みで歪が溜まり一気に跳ね上がることで大きな地震と津波を引き起こします。

 2011年東日本大震災が発生した「東北地方太平洋沖地震」は、発生が懸念されている「東海地震」「東南海地震」「南海地震」と同様の海溝型地震でした。

「東北地方太平洋沖地震」は同様の海溝型地震ですが、複数同時に発生する連動型地震でMw9.0の「超巨大地震」に分類されます。

規模 分類  1900年以降
M9以上 超巨大地震 2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災、日本観測史上最大)
M8以上 巨大地震 1923関東地震(大正関東大震災、大規模な火災)
M7以上 大地震 1995年兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災、多数の住宅被害
2016年熊本地震(前震と本震の2度の震度7が発生)
2004年新潟県中越地震(計測震度計で震度 7が観測された最初の地震)
M6以上   2018年北海道胆振東部地震(厚真町鹿沼で震度7、大規模な土砂崩れ

M8クラスの内陸型地震としては、大正関東大震災を引き起こした関東地震(M8.0程)がありますが、歴史地震以外の記録に残る内陸型地震として観測史上最大の1891年濃尾地震(M8.4程)があります。

 次に発生する海溝型の南海トラフ地震が、「東海地震」「東南海地震」「南海地震」の連動型になることが懸念され、その場合の最大規模はM9クラスになると想定されています。

下の図では、マグニチュードの大きさの違いを面積で示されていますので、感覚的に各地震での、震源の地震エネルギーの大きさの違いが良く分かります。

マグニチュード(M)の数値が、+0.1で1.4倍、+0.2で2倍、+1で32倍のエネルギーになります。

「出典:地震調査研究推進本部」防災・減災のための素材集より引用

 

 都市圏での大地震では、常に大きな地震災害が発生します。震度7を理解し震度7に備えることが身近な減災につながっていきます。

 

2023年5月22日改定

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ご参考ページ

「迫り来る震度7」その1 震度7とは

「迫り来る震度7」その2 活断層

「迫り来る震度7」その3 建築基準法と大地震

「迫り来る震度7」その4 新耐震基準でも倒壊

「迫り来る震度7」その5 南海トラフ地震はいつ発生?

「迫り来る震度7」その6 南海トラフ地震前に関西で直下型大地震の可能性は?

「迫り来る震度7」その7 南海トラフ地震による西日本大震災に備えるための耐震補強の重要性

「迫り来る震度7」その8 大地震で建物が壊れる原因と対策(RC造編)