「迫り来る震度7」その2 活断層

断層と活断層

 地下の地層や岩盤に力が加わることで割れが生じ、割れた面に沿ってずれ動いて食い違いが生じた状態が「断層」です。

地下深部で地震を発生させた断層を「震源断層」、地震時に断層のずれが地表まで到達して地表にずれが生じたものを「地表地震断層」と呼ばれています。
「出典:地震調査研究推進本部」防災・減災のための素材集より引用

 「断層」のうち、特に数十万年前以降に繰り返し活動し、将来も活動すると考えられる断層のことを「活断層」と呼んでいます(第四紀(260万年前以後)中に活動した証拠のある断層すべてを「活断層」と呼ぶこともあります)。

 現在、日本では2千以上もの「活断層」が見つかっていますが、地下に隠れていて地表に現れていない「活断層」もたくさんあります。

 これらの活断層による直下型地震が発生すると震度6強以上の強い地震になる危険性があります。

活断層
平成26年版内閣府防災白書より引用

まずは身近な活断層の確認から

 熊本地震によって、活断層の位置と地盤の情報が、地震防災上極めて重要な情報であることが再確認されました。

 地質図Naviは、産総研地質調査総合センターから配信される数多くの地質図データを表示するとともに、活断層や第四紀火山などの地質情報を地質図と合わせて表示することが可能な地質情報閲覧システムです。

 全国を表示して見ると、近畿・中部圏は「新潟-神戸ひずみ集中帯」の活断層が密集したエリアで、下図の様に断層がぎっしりの状態です。、更に未知の活断層もあります。

背景地図、スケールが自由に変えられます。


出典:地質図Navi(産総研地質調査総合センター)

産業技術総合研究所「活断層データベース」
では、各活断層の情報が確認できます。

地質図NAVI・活断層データーベースを含め、地質調査総合センターの研究成果データベース・ポータルの一覧のページです。

地震本部のページでは、地震関係で数多くの情報を確認することができます。

地震本部「都道府県ごとの地震活動」
地域ごとに、地震に関する情報を閲覧することができます。

「活断層の地震に備える」を文部科学省と気象庁が共同で作成

パンフレット「活断層の地震に備える -陸域の浅い地震-」


 全国版と地方版の2種類があり、陸域の浅い地震が起きる仕組みや主要活断層の評価、過去の主な被害などを説明し、地方版では更にその地域にある活断層や予想される強い揺れなど、地域の特徴を詳しく解説しています。

 震源断層から地殻構造内を伝搬して地表面に地震動が伝わりますが、地表に向かうに従い柔らかくなる地盤で揺れが増幅されていきます。更に特殊な地下地質構造で地表面の地震動が非常に大きく増大される場合があります。

「出典:地震調査研究推進本部」防災・減災のための素材集より引用

地震時の揺れやすさ

防災科学技術研究所の地震ハザードステーション
の、J-SHISMapで、地盤の揺れやすさが確認できます。

 ただし、ここでの表層地盤は、工学的基盤より上の部分(浅い地盤構造)のことで、微地形区分を表層地盤増幅評価の基礎データとして用いられています。 

 例えば地質構造で後背湿地は、沖積平野にある低平・湿潤な地形のことで、主に自然堤防などの微高地の背後(川に面したときの)に形成された低湿地をいいいます。軟弱地盤であるため大きな地震動では地盤の液状化や長周期地震動による被害が懸念されます。

熊本地震で甚大な建物被害が発生した表層10m程の水分を多く含んだ局所的な軟弱地盤様のものまでが詳細に評価されたものではありません。
 上図の赤色の範囲(特に濃い赤)で、更に活断層直上や付近で、ごく表層が軟弱な地盤では、地震動が2倍以上になる可能性があると言えます。

過去の土地利用状況を確認できるページでは、

国土地理院の20万分1土地利用図のページの下の方で、
20万分1土地利用調査は、「地理院地図」の情報リストメニューから「主題図」→「20万分1土地利用図(1982~1983年)」を選択することで閲覧できます。


農地や明治期の低湿地を見ることが出来ます。(図は大阪平野)

 日本では多くの人々が生活する平野部は軟弱地盤が多く、いったん大地震が発生すると地震動の増幅や液状化で、「震災の帯・キラーパルス・液状化」等の、近年の大地震で良く耳にする災害要因により大きな被害に見舞われる危険性が高いといえます。

まずは、身近な場所の災害リスクを知ることが大切です。

ハザードマップポータルサイト 
~身のまわりの災害リスクを調べる~

被害を増大させる地下構造

活断層とキラーパルス

1995年兵庫県南部地震と2016年熊本地震は共通点の多い地震です。

<兵庫県南部地震>
震源断層 六甲断層帯
破壊形式 右横ずれ断層
地震規模 M7.3
震源深さ 16km
最大震度 震度7
主に神戸市須磨区から西宮市の幅約1km、長さ約20kmの地域で被害が集中する「震災の帯」
周期1秒程度の強いパルス性の地震動「キラーパルス」を観測

<熊本地震>
震源断層 日奈久・布田川断層帯
破壊形式 右横ずれ断層
地震規模 M7.3(本震)
震源深さ 12km
最大震度 震度7
南北幅が数100km以内、東西に数km連続する「震災の帯」
地震断層直上およびその近傍で、多数の建物が倒壊した「被害の局所的な集中」
新耐震基準に適合している建物にも甚大な被害が発生。
周期1秒程度の強いパルス性の地震動「キラーパルス」を観測

共に、活断層による地震で、震度7の震災の帯に見られる「キラーパルス」と軟弱地盤による地震動の増幅により、木造住宅で倒壊による甚大な被害が多数発生しました。

 阪神・淡路大震災で、淡路島北部を震源とする兵庫県南部地震により震源から離れた神戸市街地で震度7を記録し甚大な被害が発生した地域は「震災の帯」と呼ばれました。
 神戸から阪神地域で東西長さ約20km、幅約1kmに帯状に連なって被害が集中した震度7の地域で、地下地質構造の影響で局地的な増幅が起きた現象です。
兵庫県南部地震データ集に、分かり易くまとめられています。

上図ピンク色の部分が震度7の震災の帯

やわらかい地盤でゆれが大きくなる
【出展:兵庫県南部地震データ集】

 更に、六甲山地と神戸市街地直下の扇状地堆積物の地震波の伝わり方が違っていて、六甲山地の縁伝わった地震波と、平野部の柔らかい地層を伝わってきた地震波が重なり合い、強い揺れが発生したとみられています。

 2016年熊本地震では、西原村と益城町で震度7を観測し、1995年兵庫県南部地震と同様の多数の建物被害が発生しました。
震度7で被害が集中した「震災の帯」が発生した阪神大震災とは異なり、甚大な被害がより局地的な地域で発生しました。
2度の震度7を観測した益城町で、表層地盤にある水分を多く含む軟らかい粘土層(河川周辺の軟弱な堆積物や盛り土)が強烈な揺れの原因ではないかと考えられています。


悉皆(しっかい)調査による大破率の分布

悉皆調査による倒壊率の分布
【出展:熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 報告書】

熊本地震にておいても、同様に地層の不整形性による地震被害の局所化・甚大化の原因として、
・実態波が基盤と堆積層の境界で屈折し、ある点に集中するレンズ効果
・実態波と表面波、表面波同士が増幅的干渉するエッジ効果
・盆地地形で、表面波が端部で反射を繰り返す滞留
・軟弱な粘性土が熱く堆積している場合での固有周期の長期化
が挙げられています。

日本の多くの大都市は大河川の下流域に立地しており、台地や平地に街が広がっていますので、阪神淡路大震災や熊本地震と同様の地下地質構造による地震被害の甚大化が懸念されます。

 同様の地下構造のある地域で、大阪の上町断層帯付近でも被害が集中するとの指摘があります。

まずは身近な地震対策から

令和4年防災白書にて

今後発生が危惧される南海トラフ地震や日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震、さらに近年激甚化・頻発化する気象災害などによって広域的な大規模災害が発生した場合において、公助の限界が懸念されている。

防災・減災のための具体的な行動とは、まずは「自助」として、地域の災害リスクを理解し、家具の固定や食料の備蓄等による事前の「備え」を行うことや、避難訓練に参加して適切な避難行動を行えるように準備することなどが考えられる。

また、発災時における近所の人との助け合い等、「共助」による災害被害軽減のための取組が必要である。・・・

と記されています。

「災害は忘れたころにやってくる」ことを意識して備えておくことが大切です。

 

2023年5月22日改定

◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇

 石山テクノ建設株式会社は、皆様のくらしの安全と安心を、補修・補強・耐震補強技術でサポートします。

【ご参考ページ】

「迫り来る震度7」その1 震度7とは

「迫り来る震度7」その2 活断層

「迫り来る震度7」その3 建築基準法と大地震

「迫り来る震度7」その4 新耐震基準でも倒壊

「迫り来る震度7」その5 南海トラフ地震はいつ発生?

「迫り来る震度7」その6 南海トラフ地震前に関西で直下型大地震の可能性は?

「迫り来る震度7」その7 南海トラフ地震による西日本大震災に備えるための耐震補強の重要性

「迫り来る震度7」その8 大地震で建物が壊れる原因と対策(RC造編)