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石山テクノ建設株式会社はあらゆる構造物の補修・補強・耐震工事を通じてインフラを守る環境保全企業です。

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随想 第四回 「微妙(びみょー)」

 最近「びみょー」が流行っています。
 あるコマーシャルの影響なのでしょう。
 街角や電車や喫茶店で、熱心に喋る若者たちの口をついて、この言葉が出てき ます。
 (そう、ワタクシ中年のおっさんは、新聞をひろげ、聞くともなく、しっ かり聞いているのです――ご用心!)
 「細かく複雑なこと。デリケート」(新小辞林)を言っているのか、「趣の深く すぐれていること」(同)なのか分りませんが、若者のこの言葉には何か共感で きるものがあります。
 使う為には、彼らはこの言葉の意味を知るでしょう。
 私は、人間の暮らしと文化はこの「微妙」で成り立っていると思います。
 昔、刀研ぎ師の「技」についての本を読んだことがあります。
 刀には、刀だけが持つ曲線と均衡の美があり、部分的に刃こぼれを研ぎ込むと 完成されたその線に崩れがでるため、傷の手前と先から、「普通の人間には見抜 けないほどの微妙な調整で刃こぼれを隠す」のだそうです。
 しかしその腕がいかに冴えていても、新たに創り出す作業では無いため、刀に 命を与えた作者の結果に何がしかの手を加えることになり、人を斬った刃こぼ れを直したものなのか、単なる、物理的な刃こぼれを直したものなのかまで、 自分でした仕事でなくても彼は見抜けるといいます。
 鳥肌が立つような、この眼力はまさに、「見巧者」に通じる「趣の深くすぐれて いること」の「微妙」なのでしょう。
 焼き物で言うなら、土と炎の舞いで生じる窯変は、素地(きじ)や釉薬(ゆう やく)の成分が化学変化をおこし、予測しない釉色や釉相が現れますが、これ はまさに微妙の成せる技です。
 柿右衛門も自分が納得できる微妙な色を追求し 作品を「作っては壊し、作っては壊し」していたのでしょうか。
 化学変化と言えば、わが社が行っている補修や補強工事には、化学物質である、 エポキシ樹脂を多く用います。
 この理由は、エポキシ樹脂は他の樹脂と比較し て、収縮性や接着強度、耐久性に優れ作業性も良好な「万能接着材」だからで す。

 地震や不具合、老朽化で生じたコンクリート構造物のひび割れ補修・補強につ いて、少しお話したいと思います。

○○○○○○○○イメージ  コンクリートに生じた0.1o以上(当社自主基準)の微細なひび割れにエポキシ 樹脂を注入する作業は、本当にデリケートなものです。
 座金をパテ(エポキシ樹脂やシール材)で、ひび割れの中心位置に貼付 けセットするのですが、この作業は本当に「息を凝らす」(本当に息を思わず止 めている)ほど「びみょー」な作業なのです。

 パテを座金に付け過ぎたり、中心位置がずれたりすると注入穴を塞いでしまい 注入が出来ません。
 パテが少なすぎると注入材が漏れてしまいます。
 また、注入材は主材と硬化材から成っており、正確な配合比で計量し、よく混 合・撹拌しなければ正しい化学変化が起こりません。
 外気温を考慮し、生き物 に接するように、大切に、丁寧に取り扱い、性能を引き出すのです。
 この基本を怠った例ですが、「何ヶ月たっても注入材が固まらない―」という調 査依頼があり、調べてみれば硬化材の入れ忘れで、全く強度と性能が出ておら ず、住む人の安全を損なう、考えられないような工事の不具合が過去にありま した。
 現場監督と作業員に対し充分な教育がなされていないからこの様なこと が起こるのです。

○○○○○○○○イメージ  ある現場のコンクリート構造物(厚さ1000mmで背面は土)のひび割れにエポキシ樹脂を注入した後、注入状態の確認の為ランダムにコアボーリングしたものの一部です。
 コアの直径は約50mm×長さ450mmで、注入状態を見やすくする為、エポキシ樹脂注入材に予め蛍光顔料を混ぜ込んで施工し、紫外線ライトを照射し赤く発色させています。
 写真の右手から、低圧樹脂注入工法を用い注入し、太いひび割れから細かなひび割れまで、完璧に充填出来ています。

  左先端は鉄筋位置で、ボーリングを止めていますが、その鉄筋に樹脂が巻いて、溜まったように発色しています。
 繊細な心の動き、「微妙」を一過性の流行り言葉で終わらせず、若者を始め、多 くの人びとに「侘びと寂」や「微妙の成せる技」を改めて見つめる良い機会と とらまえてほしいのです。
 自然や人や物に愛おしさを感じさせる、人間性回復 の契機にしたいものです。
 不況列島日本の、真の経済回復は人間性の回復なくして有り得ない、と私はい つもそう思っています。


石山テクノ建設株式会社 代表取締役 石山孝史


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