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菩提樹と書いて、あるいは「ぼだいじゅ」または「リンデンバウム」と聞いて、何を連想するだろうか。多くの人はシューベルト
の歌曲を、少数の人は釈迦が悟りを開いたという菩提樹を連想するかもしれない。「菩提樹」そのものを連想する人は少ないのではないだろうか。なぜ
なら樹木としての「菩提樹」は関東以西では身近に見る機会がめったにないからである。 因みに釈迦に関係するのは「インド菩提樹」。歌曲のリンデンバウムは「セイヨウシナノキ」と呼ばれている木で全く異なる木である。日 本では「シナの木」と呼ばれている木が「セイヨウシナノキ」に近い。 シナの木は建材としてはシナ合板としてよく使われている。合板の材料としては、ラワン、米松についで多く、主に内装、家具材として使 われている。合板としては建築設計の業務に携わるようになってから知ったが、立ち木としてシナの木を見たのは25年ほど前に札幌の森林公園が始めて である。黄色の少し変わった花のようなものを鈴なりにつけていた印象が今も残っている。すごい大木でその大きさに感動した。 オーストリアのウイーン近郊の森では、シナの木の純林を見た。広葉樹の純林は日本ではめったに見ない、薄い葉を透過して、光が差し込 む明るい森の風景は落葉樹ならではの美しい風景だった。街路樹にもシナの木は多い。イタリア北部も多く使われている。特にビラと呼ばれるパラディオ の設計した別荘などには、広大な敷地に屋敷のテラスから並木が延々と続く風景を多く見ることが出来る。このスケッチは北イタリアのバッサーノ・デ ルグラッパという都市のメインストリートの風景で、シナの木の薄い葉を透過した光に満ちた、素晴らしい並木道だった。ここはパラディオの木の橋 が有名な街である。 同じ北イタリアのミラノの近くにパヴィアの僧院がある。ここには参道があって、シナの木の並木が何キロも延々と門に向かって一直線に続 いている。周囲は広々とした畑でシナの大木が一層大きく聳え立っている。パヴィアの僧院もいいがこの並木も素晴らしい。 (株)京都建築事務所 監査役 小林一彦
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