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日本の風景にアクセントをつけている小さな森は、ほとんどの場合、鎮守の森として地域の人達に守られてきたものである。その森には地域の神様が鎮座している。
西日本の場合はその森の主役は常緑木である。常緑樹は松、楠、杉、榊、モチノキ、椿等多様である。大木になる木、樹形が美しい木が主役になる場合が多い。松、杉、楠等である。
椎は大木になるが主役になることは少ない。しかし脇役としては出番も多く、その果たす役割は大きい。 椎は庭木や材木としてほとんど使われない。用途は椎茸のホダ木や薪、木炭の原料くらいである。例外的に庭木として東京の浜離宮などの大名庭園には使われている。 その影響があるのか京都でも小川冶兵衛作の無隣庵に使われている。 材木としては、床板や土台として使われていたと聞くが、実際使われたところは見たことがない。実は小さいが食用になることもあり、かって椎は子供達にとって童謡にも歌われる身近な存在だった。 京都の東山は椎が多い、春の若葉の頃には山一面淡い黄緑色に染まるのでよくわかる。やがて褐色になる。椎の葉は光を通し難い、従って椎の森は暗い。この暗さが鎮守の森にはふさわしい。 奥深く神秘的な雰囲気を作るのに欠かせないのである。しかしながら現代では好まれていない、東山の椎も紅葉する落葉樹に植え替えようという動きが広がっている。主役のみ求めている、脇役の価値を知らないのである。 このスケッチは向日神社、鎮守の森の椎である(左右の大木)。ここに「鎮守の森の会」がある。私もその会員である。鎮守の森の整備と合わせて、山桜の名所にする整備や野外の石舞台で狂言の会の開催など、活発な活動を続けている。 小林一彦建築設計事務所 小林一彦
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