(25)裏庭のアメリカ花水木



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  「アメリカ花水木」は東京市長であった長尾崎行雄が1909年にアメリカに桜の苗木を贈り、その返礼として1916年に東京市に贈られたものである。 アメリカから贈呈されて90年以上経過しているが、日本でよく目にするようになったのは20年前くらいからである。同じくアメリカから1874年に贈呈を受けた泰山木は花水木より遅れること35年なのに、 瞬く間に日本中に広まったのと対照的である。その理由は何か。現代の感覚では、「アメリカ花水木」は花も美しいが紅葉も美しい、その上赤い実が多数実る。この赤い実は美しいだけでなく、 小鳥の大好物で鳥寄せには優れた道具である。常時小鳥がついばんでいるようで、殺風景な冬にもかなり残って枯れ枝に彩りを添えている。3拍子も4拍子もそろった魅力的な木で、いかにも日本人の好みに思える。 泰山木はモクレン科の常緑樹で白く大きな花と大きく厚い葉に特徴があって、寺の境内に似合いそうな和風の趣があるせいか、個人住宅の庭から寺院、公園と日本の津々浦々に瞬く間に普及した。 イタリアなどでは教会や住宅のシンボルツリーとして定番になるくらいよく見かけるが、今日、日本では忘れかけた存在になりつつある。時代の好みの変化がこのような結果となって表れたのだろうが、 泰山木は使い方によっては洋風にもなるのだが、和風という固定概念が強かったのが原因かもしれない。
  「アメリカ花水木」がとりわけ美しい所は、毎年ゴルフのマスターズが開催されるアメリカ南部のオーガスタゴルフクラブである。実際行ったわけではなく、テレビで見ただけだが、コースのシンボルツリーである。 開花をこのゴルフ競技に合わせて管理、調節されているので、何時見ても満開で見事である。京都では4月中旬から5月初旬が満開の時期だが,桜の後に白、ピンク、紅と色とりどりの花が楽しめる。 我が家の裏庭に30年前3本の小さな苗木を植えたのが大きく育ったので、それを生かして家を改築してベランダを造った。居間の窓越しのスケッチである。
小林一彦建築設計事務所 小林一彦