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大阪のモノレールは千里丘陵の高架上を走っていて眺望は抜群である。千里団地で目を引くのは羽状の樹形で遠目にも見分けられるヤマナラシである。公園、緑地、学校の校庭などに広い場所には必ずヤマナラシがある。ほかでは見かけない風景である。何故なのか、友人の造園家に聞くと緑化促進のために選ばれたのだろうという答えである。
最初の戸建ての宅地開発はイギリスの田園都市レッチワースをモデルに、鉄道開通の1920年から始まった。戦後日本住宅公団の中層団地の開発は1952年から始まっている。ヤマナラシは団地開発とともに植えられたのだろう。とすれば樹齢50年余りとなるが、それに相当すると思われる大きさのヤマナラシは多い。 30年前に出来た八幡市男山団地でも見かけたのでかって住宅公団の団地ではよく植えられていたのだろう。 ヤマナラシは京都府の植物園にもある。その銘板にヤマナラシは木材としての用途がなく、網走刑務所の囚人が白く軽いので、マッチの軸木としての利用考案したと書かれている。 箱材に利用したからハコヤナギという名称でも呼ばれている。ヤマナラシによく似て見分けがつきにくい同じヤナギ科ハコヤナギ属のドロノキと呼ばれる木がある。蘇民将来符という護符は全国の神社や寺院から頒布されている。とりわけ今から500年以上前の、室町時代より継承され続けてきたとされる信濃国分寺の蘇民将来信仰符は、全国各地に継承される蘇民将来信仰の中で、京都の八坂神社などの事例とともに代表的な事例とされている。その材料がドロノキでドロヤナギと呼ばれている。ドロノキが選ばれた理由があったに違いない。各地にいろいろな名称があるということは、古くから材の性質を知り、それを生かして利用されてきたことを物語っている。 (株)京都建築事務所 監査役 小林一彦
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