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私が好きな漫画家に手塚治虫さんがいます。
鉄腕アトムをはじめ数多くの作品を世に遺 されたみなさまもよくご存知の方です。
手塚治虫さんが書かれた「ガラスの地球を救え」という本の中に「IFの発想」があり ました。
それは、〔もし~だったら〕という発想で、未来指向・未来予測の漫画を数多く描 いてきた、というものです。
一見これはむずかしそうで誰にでも出来ることではないと思われそうですが、「もし雨 が降ってきたら、帰りはどうしようか」と心配することが未来の想像、つまり無意識に未
来の予測をしていることになるというのです。
「未来といったって、なにも二十一世紀のことだけではありません。一年先だって未来 ですし、極端に言えば一時間後でも未来です。(中略) ぼくはこういう予測をすこし先へ
伸ばして考えているだけであって、一年先も二、三十年先の予測も発想は同じなわけです」
彼は、地球の危機という現実を前にして、たとえ未来予測がたいへん暗い不安なものであったとしても、それだからこそいま、それに向かって暗く不安な材料を取り除くように
心掛ければいいのだから「IFの発想」はどんな人にも生きがいに通じるはずだ、と言っ てます。
忙しすぎる大人と子供たち――私は五年ほど前に、息子が通っていた小学校でPTAの役 員をしていた時、小学校児童生活アンケートを行いました。
その結果は次のようなもので した。
「もしも、もっと時間があれば何をしたいですか」との「IF」の問いに対し、59%の 子供が「遊びたい」と答え、21%の子供が「趣味をしたい」と答えています。「のんびりしたい」「ねたい」と疲れを訴えている子供が6%います。
あわせて86%の子供が不本意な時間を過ごしていました。
これは何を物語っているのでしょうか。
受験至上主義 ―― 人よりも良い学校に入り、良いところに就職し、良い生活を送れる ようにする。
その準備が幼児から始まっていることの表れではないでしょうか。
無駄や遠回り、道草といった「のんびり」を許さない今の社会では、どのように考えて も先に豊かさは見えてきません。
今の日本をとりまく合理主義や生産至上主義では、みずみずしい感性や独創性をもった 子供たちが育っていくはずがないから、結局はその社会を疲弊させてしまうでしょう。
近年、少年犯罪の増加と凶悪化が報道されていますが、その影響ではないかと思っています。
私の家内は――名だけのわが社の非常勤取締役ですが――1年ほど前から小学校で昼休 みを利用して、ボランティアで月2回、30分ほど児童に絵本の読み聞かせを行っています。
当初2人だったメンバーは10人余りに増え、全校生徒は二百人余ですが多い時百数十人 が参加して、じっと聞き入っているそうです。
絵本は疲れた心に染み入る「水」なのでしょうか。
私たち「すまい」に携わるものとしては、社会の疲弊は直接、受注に響きます。
〈生活がくるしいから、とても家にお金をかけられない〉ので、豊な社会実現のために努力するこ とが求められています。
未来の大人である子どもたちの、明るい笑顔を取り戻さなくてはなりません
。
手塚治虫さんは問います。
「もしも、あなたの命があと一年なら――」 いったいあなたは何をするでしょうか。
「もしも、あなたの子どもの命があと一年なら――」 いったいあなたは子どもに何をさせ てやりたいでしょうか。
石山テクノ建設株式会社 代表取締役 石山孝史
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