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目次
1.はじめに
前回、自分でも勉強不足にもかかわらずレポートを作ってみたのですが今回も懲りもせず「再チャレンジ」 という事で(その2)を作ってみました。
2.乾燥が必要
木は、どんなに精度よく刻まれ、組み立てられても乾燥が不十分であれば、水分が少しずつ抜け収縮する
為木材内部に応力差が生まれ、反りや捩れ、割れを生じます。
木材は、建物のその場所に応じた平衡含水率(大気の温湿度の応じた含水率に落ち着き、平衡な状態になる
事)の状態におく事で狂いは止まります。
一般には、平均して15%がその状態の目安です。
乾燥の目的の1つは
その状態に近づく過程で生じる木材の狂いを出しきり、寸法の安定性を保つ事です。
伐採され製材されたばかりの木材のほとんどは含水率100%以上となっていますが、これが乾燥過程で繊維飽和
点(含水率30%前後)に低下するまでに生じる狂いはあまり大きいものではなく、むしろそれから先の平衡含水率に
いたるまでの収縮の過程で大きな狂いを生じます。
図1 含有水分による細胞の状態と狂いの関係
乾燥のもう1つの目的は、耐久性の低下の予防です。
木材が水分を含んでいると菌類が発生しやすいため
腐朽しやすく、蟻害も受けやすくなります。
このため建築時の乾燥はもとより、築後でも乾燥状態を維持する工
夫をする事が必要です。
3.木の耐久性
長寿命の木造住宅を目指すうえで構造材の耐久性の向上は必要条件です。
これを満たすためには、まず、
耐久性のある樹種の選択が必要とされます。
表1に主な樹脂の心材の耐久性(耐腐朽性と耐蟻性)を示します。
表1
項目 | 耐腐朽性 | ||||
---|---|---|---|---|---|
極小 | 小 | 中 | 大 | ||
耐 蟻 性 |
小 | アカエゾマツ エゾマツ アスペン |
アカマツ クロマツ モミ ベイツガ ブナ |
カラマツ ホクヨウカラマツ ベイマツ ミズナラ ホワイトホーク |
ベイスギ |
中 | イタヤカエデ クスノキ トチノキ |
ツガ アカガシ |
スギ カツラ レッドメランチ |
ヒノキ ベイヒ クリ ケヤキ |
|
大 | トドマツ | タウン アカガシ |
タブノキ | カヤ コウヤマキ ヒバ チーク メラワン |
一般に土台や湿気の多い部分ではヒバやヒノキ、クリなどの耐腐朽性、耐蟻性のある材が選択されます。
ただし、いくら耐腐朽性、耐蟻性があるといっても、木材の耐久性を高める為には、木材を湿気の発生源から
は、出来るだけ遠ざけたいものです。
4.集成材
4.1集成材とは
大きな断面の木材や長い通直材を得ようとすると、樹齢の大きい限られた木からしか得られず、また乾燥等の工
程に時間を要します。
またその中から、ふし、われ等の欠点のないものを入手する事は、ほぼ不可能に近い事で
す。
しかし、接着技術を利用し、ひき材や角材を集成し、各種の欠点を分散させると、大断面や長い通直材に相当する
木材を作ることが可能となります。
このような技術によりつくられた集成木材を一般に集成材と呼んでいます。
集成材の各層を構成するひき板をラミナといい、これらを接着剤にて一体にします。(図2)
また、長い材料を作るため、図3に示す方法により、ラミナ同士を接合します。
JAS(日本農林規格)によると、集成材とは、「ひき板又は小角材等をその繊維方向を互いにほぼ平行にして、厚
さ及び長さの方向に集成接着した一般材」を指しています。
単板を直角に貼ったり、接着に必要な圧締力を釘やボルトであたえているものについては、集成材とは呼ばない
ようです。
JASにおいては、断面の大きさにより「集成材の日本農林規格」及び「構造用大断面集成材の日本農林規格」
の2つの規格が設けられています。
「構造用大断面集成材の日本農林規格」では、幅が7.5cm以上で積層厚が15.0cm以上の構造用集成材をいい、
その中でも、幅、積層厚が15.0cm以上かつ断面積が300c㎡以上を甲種、それ以外を乙種として分類しています。
4.2 構造用集成材の特徴
構造用集成材の特徴を列記すると次のようになります。
①ラミナを接着前に所定の含水率に乾燥するので、長大材になっても各部の含有率の傾斜が少なく、割れ 反り、曲がり、ねじれなどを避けることができる。
②機械による仕上げ加工が施されているので、製品の寸法精度が高い。
⓷ラミナの段階で強度を低減させる節などを除去するとともに積層によりその分散をはかれば、強度性能の 優れた、かつバラツキの少ない製品を生産できる。
④製品の乾燥度が高く、耐久性の高いレゾルシノール樹脂接着剤が用いられているので、室内のような温和な使用 条件下では、割れやはくりなどの障害が起こる事は極めて少ない。また、屋外や床下などの苛酷な条件下で
も、集成材に防腐剤や防蟻剤を塗布又は加圧注入すれば、必要な耐朽性を確保できる。
⑤湾曲、テーパーなど任意の形状、長さをもつ部材の製造が可能。
⑥ある一定以上の大断面の部材では、燃焼の際表面の炭化によって部材内部への燃焼拡大が抑制されるので、かなり高い耐火性能をもっている。
⑦集成材の強度は、一般的な1級の集成材とすると、普通の木材の約1.5倍となる。
ちなみにRCの強度は、 集成材の1.5倍で、RCのはりの断面は、集成材のはりの3/4程度となるが、RCの比重が集成材の約4倍 であって、重量は約3倍となる。したがって単位体積あたりの強度から見ると、集成材のはりはRCはりの約3倍の性能を有することになる。
5.まとめ
木は、他の構造部材とは違った性質(乾燥する等)をもつ構造部材のようです。
自然に作られるものである為、品質もまばらです。
同じ樹木でも良いものか悪いものかの選択ができなければ良い設計及び監理が
できないのではと思い始めました。
また、他の構造部材に比較しても見せる構造にする事が出来るためもっとも部材寸法に敏感になる必要
のある構造部材だと感じました。
最後に集成材の性質を書いてみました。
最近集成材の物件に関わる事ができました。
25.0mスパンの建物のフレームを集成材で設計したのですが、梁、柱とも800mmの成(幅は150mm)となりまし
た。
柱と梁の境は湾曲した部材を用いました。
図面上でも、そんなにおかしい形ではなかったので、今後の出来あがりが楽しみです。
いままでの木造建築物は優秀な職人さんが過去の経験を元に木造の構造部材の大きさを決定してきました。
今後は、我々構造技術者がそれを受け継ぎよい木造建築物を残していかなければと思います。
参考文献)
大断面木造建築物設計施工マニュアル(日本建築センター)
木造住宅(私家版)仕様書(建築知識)
トチオ構造設計室VOL.5
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