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目次
1.はじめに
建物を計画する場合「杭がいるのかどうか。」とか、地面から下の事って気になるところです。
建築コストにも影響します。その地面の下にある「土」……これもなかなか色々ありそうです。
2.土の層(土層)の歴史
土層は長い年数かかってつくられていきます。
一般に土層の深いところに堆積したものは古い時代のものであり、そのためかたい土層をなしています。
浅いところに堆積したものは、その逆です。
地層の層序などを歴史的に区分した年代を地質年代と呼んでいます。
地質年代は図1のように区分されます。
図1 地質年代
地質の時代は、古いほうから順に、先カンブリア代、古生代、中世代、新生代に大別されます。
恐竜が地球上から姿を消し、哺乳動物が活躍し始めた6700万年前を境とし、それより新しい時代を新生代といいます。
その新生代も人類が誕生した約200万年前を境にして第3紀と第4紀に分けられています。
3.洪積土層と沖積土層
第4紀において、今より約1万年前を境にして、それ以前を洪積世、それ以後現在までを沖積世と呼ばれていま
す。(図1参照)
洪積世に堆積した土層を洪積土層 (今後洪積層という)、沖積世に堆積した土層を沖積土層(今後沖積層という)
といいます。
洪積世やそれより古い時代の堆積した土層は、かたい土層を形成し、よく構造物の支持地盤となりま
す。
沖積層は堆積時代が新しいため、現在以上の重みをうけていないため締まり方がゆるく、土層は一般に軟弱
です。
4.土の区分
土はその粒径により粘土から礫に分けられます。下表に粒径による土粒子の区分を示します。
表1 粒径による土粒子の区分
シルトや粘土粒子が多い土は、細粒度または粘性土、砂や礫粒子が多い土を粗粒子といい、砂が多い場合は砂質土、礫が多い場合は礫質土と呼ばれています。
5.土質調査
地盤を構成している土は多種多様であり、建築物の基礎の設計や工事にあたってはその敷地の地盤が
どのような性質であるかを知ることが非常に重要なことです。
その為に行われるのが、土質調査です。
土質調査には、現地で直接に地盤の性質を調べる原位置試験、調査地点で採取した土試料を室内で調べる室内土質試験があります。
原位置試験には、サウンディング試験、載荷試験等が含まれます。
サウンディング試験とは、ロッドの先端に取りつけた抵抗体を地中に挿入して、貫入・回転の抵抗値から土の強さなどを推定する試験、載荷試
験とは、直接地盤に載荷し、荷重と変形の関係を調べ、地盤の支持力を求めるものです。
室内土質試験では、土の粒度、強さ等を試験により把握するものです。
6.サウンディング試験
6.1 標準貫入試験
ボーリング孔にロッドを挿入し、地上部に取りつけた重さ63.5kgのハンマーを75cmの高さからロッドに落下させ
ロッドが土に30cm貫入するのに叩いた回数(N値という)により土の硬軟・締り具合いを調べるものです。
N値はふつう深さ1mごとに測定されます。測定結果は図3のような形で記録されます。
図2 標準貫入試験
図3 土質柱状図
N値はその大きさによって、土の硬さ等を表現します。またテルツァギーという人の提案した式にこのN値を 当てはめる事により地盤の支持力を計算します。
N値は、粘性土と砂質土では、扱いが異なり同一の支持力であれば、粘性土のN値のほうが、砂質土の
N値より小さくなります。(N値だけで地盤の強さは判断できません。)
特に礫が混入している場合は、地盤の強さを過大評価してしまう恐れがあり注意が必要です。
土質柱状図には、N値のほかに、土質、記事、10cm毎のN値が記載してあります。
「土質」により粘性土か砂質土かが判り「記事」によりその層の特色が読み取れます。
10cm毎のN値は、N値が均一なものであるかどうかの判断材料になります。
6.2 スウェーデン式サウンディング試験
戸建住宅など小規模な建物には、比較的調査の簡単なスウェーデン式サウンディング試験がよく採用されています。
標準貫入試験に比べ調査費用も安くてすみます。
スクリューをつけたロッドの上におもり(50N(5kg)から1KN(100kg))をつけ、人力で上部のハンドルを回転させ土へ25cm貫入した半回転数を測定する。
25cmあたりの半回転数を1mあたりの半回転数に換算します。(Nsw)
標準貫入試験のN値との関係は下式によります。
砂質土 N=0.002Wsw+0.067Nsw Wsw:おもりノ重さ(N)
粘性土 N=0.003Wsw+0.050Nsw Nsw:1m貫入するのに要した半回転数
図4 スウェーデン式サウンディング試験
スウェーデン式サウンディング試験は、浅い支持地盤の調査には有効ですが、ある程度の深さになると小さい礫などにあたって貫入不能になるなど深い基礎(2m以上)には不向きであると
思われます。
また試料の採取が出来ないためその層が砂質土が粘性土かが判断できません。
したがって目視で確認する以外は、前述のN値との関係式に代入はできません。
「標準貫入試験と併用して使う」という様にすれば、そういった欠点を補えるかもしれません。
7.まとめ
今回は土についてまとめてみました。地盤調査はたしかにお金がかかります。
ただし建物の基礎の設計をする為には非常に大事な資料となります。
地盤調査をする事により、基礎のボリュ-ムを減らすことで全体のコストが安くなることもあります。
1度沈下してしまった建物の補修には、新築の時の基礎工事費より比べものにならないくらいの費用が必要です。
試験をする業者の選択にも考える必要があります。
構造設計者は、標準貫入試験の結果で基礎の設計をおこないます。
N値の間違い、土質の間違いは命とりになります。
ただ安いだけの業者ではなく、その地域で実績のある地質業者にお願いすることが大切かと思います。
参考文献)
ザ・ソイル(建築技術) 絵とき 土質力学
トチオ構造設計室VOL.6
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