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「迫り来る震度7」その7 長周期パルス

朝日新聞2018年1月14日36Pの科学の扉「想定外を考える」の記事で、「免振脅かす長周期パルス」の特集が有りました。

震源アスペリティーから発生する周期1-2秒の指向性パルスは「キラーパルス」と呼ばれ、木造建物、中低層非木造建物といった、日本の大部分を占める建物に対して大きな被害を引き起こすことが知られています。
また、東日本大震災では「長周期長時間地震動」により、55階建ての大阪府咲洲庁舎(大阪市)で最大で左右に2.7mもの揺れが長く続きました。

この記事では、超高層ビルに影響を及ぼす長周期パルスに関して報じられています。

以下記事より抜粋・・・・・

2016年4月の熊本地震で、震度7を観測した熊本県西原村。京都大防災研究所の岩田知孝教授(地震動地震学)が記録を解析すると小刻みな揺れに続き、脈打つような大きな揺れがみえた。「長周期パルス」と呼ばれる特殊な揺れだ。揺れが一往復する時間が「周期」で、2秒以上を「長周期」と呼ぶ。西原村の揺れの周期は約3秒だった。

西原村で観測された最大毎秒2.6mの揺れは、国が示した超高層ビルの設計用の揺れのレベルを上回る

超高層ビルの課題はこれまで、「長周期長時間地震動」だと考えられてきた。東日本大震災では55階建ての大阪府咲洲庁舎(大阪市)は最大で左右に2.7mの揺れが長く続いた。

工学院大の久田嘉章教授(地震工学)らは、高さ120m29階建ての鉄鋼でできたビルで試算したところ、最上階は代々左右に2.9m揺れた。梁や柱が損傷、揺れがおさまってもビルに変形が残った。

こうした揺れは地震動のエネルギーを吸収する「ダンパー」の効果が大きい。ところが、長周期パルスの場合建物の変形や損傷が一気に進みかねず、ダンパーの効果は長周期長時間地震動ほど期待できない。

長周期パルスの影響は「免震支承」という装置で揺れを抑える建物でも心配されている。
免振支承は変形することで地面の揺れとの共振を避け、地震エネルギーを吸収する。地面の動きが大きく、変形が大きくなりすぎると、免振支承が壊れたり、周囲の擁壁に建物が衝突したりする恐れがある。

設計工夫の途上

変形が大きすぎる時だけ働くダンパーをつけ、擁壁にぶつかる前に変形を押さえる対策が有る。
免振支承などが支え切れなくなったとしても、建物を支える構造にする方法も有る。
想定より大きな揺れに対しては、(擁壁との)衝突を許すという考え方あるが、これまで衝突を想定していなかったため、建物への影響はよくわかっていない。
建物の柱や梁を強くしたり、建物や擁壁に衝撃を和らげる緩衝材を付けたりして、衝突の被害を減らす対策もある。

活断層と関連

長周期パルスには2種類ある。

一つが西原村で観測されたタイプ。

マグニチュード7級以上の地震が起こり、地面に断層のずれが達した場合、その近くだけで観測される極めてまれな減少。地震波に地殻変動の影響が加わって生じると考えられている。西原村では、断層に平行な東西方向で強い揺れが観測された。
政府の地震調査委員会は、主な断層を調べ、揺れを予測する手順を公表しているが、こうした大きな揺れは想定していない。
もう一つの長周期パルスは、地下深いところで断層が動き、地震波が重なって大きな揺れになるタイプで、断層と直行する方向に出やすい。

・・・・・抜粋終わり

気象庁のホームページで長周期地震動の震度階級に関して解説されています。

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長周期地震動に関する情報について

長周期地震動階級の導入

気象庁では、地震時の人の行動の困難さの程度や、家具や什器の移動・転倒などの被害の程度を基に長周期地震動 による揺れの大きさを4つの階級に区分した<長周期地震動階級>という指標を新たに導入しました。

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ゆっくりした揺れであっても大きな揺れ(長周期地震動)では、その揺れに翻弄されてまともに避難することがことが出来なくなります。新聞記事の最後は、久田教授の言葉で「大規模な活断層の近くであれば、万が一の対策が必要になる。活断層の位置や規模、地震の発生間隔などを調べて建物のリスクを判断してほしい」とまとめられていますが、今後は東海・東南海・南海トラフによる海溝型地震で発生する長周期地震動のみならず、熊本地震で初観測された長周期パルスによる超高層建物に対する対策も必要です。