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木造住宅の大敵【キラーパルス】ver.2

いつどこで大地震が発生してもおかしくはありません

というと、どこでもはおかしいと言われそうですが、日本の大陸が形成される過程までを含めると、想像を絶する大変動の結果現在の日本大陸が有り、これからも大地震や火山噴火は必ず発生します。

1995年(平成7年)1月17日に発生した兵庫県南部地震による阪神淡路大震災以降、日本の国土は地震活動期と言えます。
2011年東北地方太平洋沖地震以降も各地で地震が発生し、2016年熊本地震で大規模地震災害が発生しました。

東北地方太平洋沖地震の余震以外で、
中部から九州にかけて、マグニチュード6以上の地震が
2013年淡路島地震
2014年長野県神城断層地震
2016年熊本地震
2016年鳥取県中部地震
と、発生しています。

また、プレート境界付近では、
2016年4月に三重県南東沖地震が発生し、南海トラフ地震の地震発生域での前震と見られています。

内陸部の地震は、多くがプレートの移動に伴って内陸部の断層へひずみが蓄積されることで発生します。

年代を遡ると近年でさらに大地震が各地で発生しています。

地震活動期と言える現在では、どこで大地震が発生してもおかしくはない状況です。

地震動と建物の揺れ


地震波によって生じた地表面の地震動により様々な建物が揺れます。
地震動は下記の周期が混ざり合ったものです。

建物自体が地震で揺れるのは、建物の固有周期が地震動の周期に「共振」するためです。

いろいろな木造住宅の固有周期は、最近の頑丈な木造家屋 0.1~0.3 秒ほど、古い木造家屋 0.3~0.5 秒ほどで、木造家屋の固有周期はほぼ0.1秒から0.5秒までの範囲になります。
しかし、実際は周期1~2秒の地震動「キラーパルス」により多くの建物被害が発生しています。

震源アスペリティーから発生する指向性パルスによる、周期1~2秒の地震動は「キラーパルス」と呼ばれ、木造家屋に大きな被害をもたらす特徴があり、阪神大震災では、特に「震災の帯」に見られる軟弱地盤で多くの木造家屋が倒壊しました。

建物自体が揺れると、損傷が無ければ元の状態に戻れます(弾性)が、損傷が発生すると傾きが元に戻れなくなります(塑性化)。

建物が地震や台風による水平力で変形していくときの性能を決める指標は、弾性範囲での壁や接合部が傷む直前の「損傷限界」損傷による塑性化が進み倒壊直前の「安全限界」です。


弾性(だんせい)
力が加わると変形するが、力が無くなれば元の状態に戻る性質。
塑性(そせい)
力が加わって変形したとき、変形が残り元の状態に戻れなくなる性質。

木造住宅は弾性体ではなく、小さい変形時から荷重-変形曲線の関係がある弾塑性体で、塑性状況により建物の周期は異なります。生活振動(常時微動)は、弾性体として建物の固有周期で振動します。


大地震時では大きな力が建物に加わり、数回の揺れで早期に損傷が拡大し周期が伸びます。


この伸びた周期を「等価周期」と呼びます。等価周期は、弾性周期の4- 6倍程で、固有周期0.3秒では等価周期は1.2~1.8秒となり、「キラーパルス」に共振することで建物の損傷が拡大していきます。

  
小さい変位       大きい変位

建物が「共振」による鞭振り現象で変形することで更に損傷が拡大していきます。

木造住宅の変形と損傷度合い

1階床から2階床或いは2階床から屋根との間の水平変位量を層間変位と呼びます。また、この変位量を階の高さで割った値を層間変形角と呼んでいます。

木造住宅では、安全性を考慮した変位は1/30が目安になります。

1/30の変位(層間変形角)は、例えば 平成16年に建材試験センターで行われた実大加振実験での耐震等級3の結果「1/26rad」ほどの値になります。(等級1で1/5rad、等級2で、1/13rad)
倒壊時は数分の1ほどの変位ですので、等級1はほぼ倒壊状態です。
実験はキラーパルス成分の多いJR鷹取波ではなくJMA神戸海洋波で行われています。

熊本地震の建物被害

熊本地震での木造住宅の被害では、1981年以前の旧耐震基準の建物で大破・倒壊が半数に及びます。又、新耐震機銃であっても2000年以前に大破・倒壊が2割ほど発生しています。
新耐震基準の木造建物が倒壊に至った原因として、接合部仕様が不十分で先行破壊を生じ、耐力壁が十分に機能しなかったことが主な要因のひとつとして挙げられています。
1981年(昭和56年)建築基準法施行令大改正(新耐震設計基準)で、
・柱頭・柱脚の補強金物が規定されていない。
・壁のつりあい良い配置についての規定がない。
ことが、大地震時での倒壊要因と考えられます。
2000年(平成12年)建築基準法改正(新・新耐震基準と言える)において、
1)地耐力に応じて基礎を特定。地盤調査が事実上義務化。
2)構造材とその場所に応じて継手・仕口の仕様を特定。
3)耐力壁の配置にバランス計算が必要。
となり、現在の耐震性に至っています。

最低限の基準としての建築基準法

建築基準法を守れば大地震に対しても十分安全な耐震性を備えているわけではありません。

建築基準法の耐震性能は、あくまで「最低限の基準」であり、「震度6強の地震が来ても倒壊しない」という程度のものです。震度7の地震では倒壊する場合もあります。
また、キラーパルスや余震(繰返しの地震)に対して考慮されているわけではありません。

1981年以前の旧耐震基準の建物では、耐震診断の上耐震補強が必要です。
新耐震基準の建物であっても、2000年以前に建設された建物では、まず耐震診断を行い建物の耐震性能を確認して不足分を補強することが大切です。
建物が強いことは、前述の耐震等級やEディフェンスで行われている加振実験での結果通り、1度の大地震では倒壊を防ぐことが出来ます。

さらに、繰り返しの地震に対しては制振ダンパー等を利用して繰り返しの地震対策を講じることも有用です。