「迫り来る震度7」その5 南海トラフ地震はいつ発生?

 

周期的に起こる海溝型地震

2011年東日本大震災が発生した「東北地方太平洋沖地震」は、発生が懸念されている「東海地震」「東南海地震」「南海地震」と同様の海溝型地震でした。

海溝型の巨大地震の特徴は、広範囲で多大な被害が発生することです。

平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の震度分布

「出典:平成23年版 防災白書」

 長周期地震動により、震源から約800kmほど離れた大阪府咲洲庁舎(旧WTC、55階建て、高さ256m)で、震度3(気象庁震度階級)でも立っていられないほどの揺れ(最上階では約2.7mほどの揺れ幅)が10分間ほど続きました。

 長周期地震動による揺れは計測震度との解離が大きく、2013年3月23日より4段階の「長周期地震動階級」が設定されました。

「東海地震」「東南海地震」「南海地震」は100~200年ほどの周期で繰り返し発生しています。下図の様に内陸部で発生する地震を含めて、地震が活性化する期間が繰り返され、現在は地震の活性期真っただ中と言えます。

「東北地方太平洋沖地震」は同様の海溝型地震ですが、間隔はそれらよりも長期で、津波堆積物から過去3,000年間で4回の巨大津波が発生した事が確認されています。

 次に発生する「東海地震」「東南海地震」「南海地震」も連動型になることが懸念され、その場合の規模はM9クラスになると想定されています。

南海トラフ地震は周期的に発生し、直近は1946年12月21日の昭和南海地震です。

これから30年ほどは要注意

 2001年9月28日(金)の読売新聞記事で、南海地震は「30年内に発生40-50%」のタイトルで、50年以内では80%程度となっていました。

それから、18年後の現在・・・

地震調査研究推進本部ホームページ

長期評価結果一覧にPDFファイルで、各種の評価結果が掲載されています。

「今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」
で、南海地震の発生確率は「30年以内で70-80%、50年以内で90%程度かそれ以上」となっています。10年以内でも30%と決して低い確率では有りません。

「50年以内の90%」ではさすがに地震が発生しているとは思いますが、「それ以上」という表現で100%の表示は有りません。しかし「100%」ではない以上実際はいつなのかが今一よくわかりません。

2036年ごろに発生?

海溝型地震の長期評価のページに有る資料で、

「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版)について」より

 室津港(高知県)における南海地震時の隆起量と地震発生間隔との関係

 階段状の赤線が地震によって隆起した量を示す。水色の線は地震時の起算隆起量の平均隆起速度。このモデル(時間予想モデル)によると、次の南海トラフで発生する地震は昭和の地震後、約90年後に発生することになる。

・・・ので、次の南海トラフ地震の発生時期の予測は、1946+90=2036年で、今から16年後ほどになります。しかし実際次の地震がどこを起点として発生するか?東海・東南海・南海地震が一度に発生するか?2036年以前か以降か?は予測困難ですが、下記の「時間予想モデル」から、南海トラフ地震の発生確率が「30年以内で70-80%」と高い確率で差し迫ってきている状況です。

【時間予想モデル】

 時間予想モデルによる今後30年以内に南海トラフで大地震が発生する確率の時間推移評価時点(2013年1月1日、前回評価時点(2001年1月1日)

・・・線の赤と青は地震発生間隔のバラツキの仮定の違いによるもので、評価時点より現在7年経過しています。

 「確率の時間推移」は、このグラフ上を時間の経過とともに進んでいき、確率が上昇していくことになり、現在は「30年以内で70-80%」になります。

熊本地震以降で西日本の地震が活性化

 気象庁ホームページの防災情報のページ下部に「震度データーベース検索」へのリンクが有ります。
 ここで、日時や期間・最大震度(例えば3以上)を入力すると発生した地震が一覧表示されて、その一覧表の下に「震央分布図」が図示されます。


以下は、最大震度3以上で各期間設定時の「震央分布図」より抽出した図です。

 東日本大震災~熊本地震前 と 熊本地震以降~現在 を比較すると西日本での地震が活性化していることが分かります。

東日本大震災~熊本地震前の期間

出典:気象庁「震度データーベース検索」より引用(以下同じ)

熊本地震以降~現在までの期間

プレートからの圧縮力で断層が影響を受ける

 「熊本地震以降~現在までの期間」で、ユーラシアプレート内の内陸部で地震が増えています。これは、フィリピン海プレートからの圧縮の力の影響に他なりません。

※日本大陸を形成している4つのプレート
茶色の線はプレート境界です。緑の線は構造線(断層)で、西日本には関東から九州に伸びる中央構造線と呼ばれる長大な断層があります。

「出典:朝日新聞2018年12月1日1面」

2018年・2019年・2020年と年度別で確認すると地震が増えてきています。

2018年

2019年

2020年(9月29日まで)

まずは身近な防災対策から

南海トラフ地震の発生がいつかを特定することは困難ですが、要点として
・周期的に必ず起こる大地震であり、発生時期が近付いている。
・東日本大震災よりも、遥かに甚大な被害が広範囲に発生する。
そのために、まずは身近な防災対策の見直しから始めることが大切です。

南海トラフ地震の震度予測
「出典:気象庁HP 南海トラフ地震で想定される震度や津波の高さ」より引用

南海トラフ地震の被害予測
日本経済新聞2012年5月30日記事より引用

 内閣府の有識者会検討会は29日、駿河湾から日向灘の「南海トラフ」を震源域とする最大級の地震が起きた場合、最大32万8千人が死亡し、238万人6千棟が全壊・焼失するとの被害想定を公表した。
津浪からの迅速な避難や建物耐震化で最悪ケースの死者は6万1千人に減らせると内閣府は説明。減災対策を進めるよう呼び掛けている。・・・

 日本は現在、新型コロナウイルスによる世界規模の危機に直面していますが、生活基盤を脅かす、地震、火山噴火、台風、豪雨、竜巻等の繰り返し発生する自然災害に対して、防災意識・防災対策の維持向上は欠かすことが出来ません。

南海トラフ地震 予知困難 備蓄1週間分求める
 (2013年(平成25年)5月29日 朝日新聞1面記事より抜粋)南海トラフ巨大地震の対策を検討していた国の有識者会議は28日、地震予知が現状では困難と認め、備えの重要性を指摘する最終報告書をまとめた。
・・・
家庭用備蓄を「1週間分以上」とすることや巨大津波への対応を求めている。
・・・
南海トラフ地震は、静岡県の駿河湾から九州東方沖まで続く、深さ約4千メートルの海底のくぼみ【南海トラフ】で想定される地震。トラフ沿いの太平洋沿岸を強い揺れと津波が襲い、最悪の場合死者が約32万人と見積もられている。
・・・
「現在の科学的知見からは(地震直前の)確度の高い予想(=予知)は難しい」との下部組織の見解を報告書に引く形で、限界を認めた。
。。。抜粋おわり

とのことでしたが、防災意識を常日頃維持し続けることは、なかなか難かしいことです。

 都会では、コンビニ・スーパー・自販機の水やお茶類・食料は、あっという間に一瞬で無くなってしまい、救援物資がすぐには届かない「陸の孤島」になってしまいます。
 1週間分となると、備蓄として維持し続けることが難しいですが、取敢えず自宅に水はペットボトル2L×6本×4~6ケースを順次使いながら常に備蓄しています。最悪水だけでもあれば暫らくは凌げます。簡易トイレやカセットコンロも用意しています。

記事に1週間分として、下記の内容で紹介されていました。

皆さんはどこまで準備されています?

南海トラフ被害1410兆円

2018年6月8日朝日新聞1面より引用
地震や津波+経済低迷20年(土木学会推計)
「南海トラフ地震」後の経済被害額は最悪の場合、20年間で1240兆円とする推計を土木学会が7日公表した。直接の被害と合わせると1410兆円になる。建物の耐震化や道路整備などの対策によって被害額は4割程度減らせるとして、今後15年程度で完成させるよう提言している。・・・

 記事の最後に「日本が最貧国の一つになりかねない」とのコメントが有りましたが、自然災害大国の日本は、いかに先進国・経済大国であっても決して安全安心な国土・社会とは言い難いことは近年の自然災害による被害状況からも明らかです。今後15年程度・・・は、「南海トラフ地震」の発生時期を念頭に置いた見解と言えます。

 地震では、更に内陸部での大地震の懸念が有ります。
 「2016年熊本地震と鳥取県中部地震、2018年大阪府北部地震は、フィリピン海プレートからの圧力によりユーラシアプレートが圧縮されて起きた地震で、今後も内陸部で地震が発生する可能性が有ります。
近畿圏では「上町断層帯のM7.5の大地震」が可能性の高い地震として認識されていますが、果たして南海トラフの影響で今後30年内に発生するでしょうか?


「出典:朝日新聞2016年4月17日8面」より


「出典:2016年(平成28年)4月16日 朝日新聞1面」より

 上町断層帯の地震規模予測M7.5は、兵庫県南部地震M7.3の2倍、大阪北部地震M6.1の128倍もの規模の大地震になり、関西大震災と言える程に広範囲に渡り甚大な大震災が予想されています。

 南海トラフ地震が発生する前に、内陸部で活断層による直下型の大地震が発生するのでしょうか?

次回テーマ:「迫り来る震度7」その10 南海トラフ地震前に関西で直下型大地震の可能性は?

 

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【参考ページ】

南海トラフ仮設205万戸必要

南海トラフ巨大地震のリアルCG映像が公開されました

長周期地震動で揺れ幅最大約6メートル!

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「迫り来る震度7」その1 震度7とは

「迫り来る震度7」その2 活断層

「迫り来る震度7」その3 建築基準法と大地震

「迫り来る震度7」その4 新耐震基準でも倒壊

「迫り来る震度7」その5 南海トラフ地震はいつ発生?

「迫り来る震度7」その6 南海トラフ地震前に関西で直下型大地震の可能性は?

「迫り来る震度7」その7 南海トラフ地震による西日本大震災に備える<Part1.耐震補強の重要性>