テクノなブログページ

テクノなブログページ

「迫り来る震度7」その6 南海トラフ地震前に関西で直下型大地震の可能性は? 

関西圏は活断層の密集地帯です

 南海トラフ地震が発生するまでの期間で、内陸部で活断層による直下型の大地震がはたして起こるでしょうか。

 日本には地震を引き起こす可能性のある活断層が分かっているだけでも約2,000あり、その中で、関西(近畿)圏は「新潟-神戸ひずみ集中帯」の活断層が密集したエリアで、更に未知の活断層もあります。活断層は地震が起こる周期が何千年と非常に長く、発生確率は低くなりますが、「発生確率が低い=地震が起きない」わけでは決してありません。地震大国日本である以上、地震に対する日頃の備えが大切です。

 ひずみ集中帯には、「新潟-神戸ひずみ集中帯」と「日本海東縁ひずみ集中帯」の2つがあります。前者は、国土地理院のGPS観測網(GEONET) によって検出された現在のひずみ速度の速い領域であり、後者は、過去300 約300万年前から大きな短縮変形が生じたことが地質学的に示されている領域です。【図1】ひずみ集中帯付近で発生した大地震(出典:地震本部 地震本部ニュース平成20年(2008年)5月号)・・・ひずみ集中帯に破線枠を追加

 近畿地方には多くの活断層が密集し、過去より大地震が繰り返し各地で発生しています。

 

【図2】出典:産総研活断層データーベース」地下構造可視化システム簡易版

 内閣府予防対策用震度分布の図に見られるように、多くの人々が生活している地域で、震度6強以上の強い揺れが発生する可能性があります。


【図3】出典:内閣府防災情報のページ 中部圏・近畿圏直下地震対策」

 中世以降で、兵庫県南部地震M7.3と同等規模以上の地震が幾度も近畿各地で発生しています。

①1596年 慶長伏見地震 M7.5
②1662年 寛文近江・若狭地震 M7.6
③1830年 京都地震 M6.5
④1854年 伊賀上野地震 M7.3
⑤1858年 飛騨地震 M7.1
⑥1891年 濃尾地震 M8.0
⑦1925年 北但馬地震 M6.8
⑧1927年 北丹後 地震 M7.3
⑨1943年 鳥取地震 M7.2
⑩1948年 福井地震 M7.1

 1995年の兵庫県南部地震までは大きな地震が有りませんが、兵庫県南部地震以降で地震活動が再び活性化しています

 阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震は、野島断層付近(六甲・淡路島断層帯の一部)を震源とするM(マグニチュード)7.3の地震で最大震度7を記録し広範囲に渡り大災害が発生しました。地震規模の予測が更に大きい断層帯が関西圏に有ります。


【図4】出典:2016年(平成28年)4月16日 朝日新聞

  関西と近畿の表示が、文面や資料で混在しますが、関西は一般的に、近畿地方のうち2府4県(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)の範囲になります。

関西圏で近年発生した地震被害の概要

関西圏では震度6弱以上の地震が3回発生しています。


【図5】出典:気象庁「震度データーベース検索」より引用

発生日 地震名
地震規模 最大震度
2018/6/18 大阪北部地震 M6.1 6弱
2013/4/13 淡路島地震 M6.3 6弱
1995/1/17 兵庫県南部地震 M7.3  7

この3つの地震は性質が異なったもので、住宅被害もその影響を受けています。

兵庫県南部地震 地震規模M7.3 最大震度7  震災の帯「多数の全壊被害」
淡路島地震 地震規模M6.3 最大震度6弱 軟弱地盤「多数の一部損壊被害」
大阪北部地震 地震規模M6.1 最大震度6弱 短周期が卓越「多数の一部損壊被害」

「兵庫県南部地震」

最大震度震度7の揺れで広範囲に甚大な被害を招いた阪神・淡路大震災を引き起こした地震です。


【図6】出典:地震本部パンフレット活断層の地震に備える

 阪神・淡路大震災で、淡路島北部を震源とする兵庫県南部地震により震源から離れた神戸市街地で震度7を記録し甚大な被害が発生しました。

 周期1~2秒の地震動は「キラーパルス」と呼ばれ、木造家屋に大きな被害をもたらす特徴があり、阪神大震災では、特に「震災の帯」に見られる軟弱地盤で多くの木造家屋が倒壊しました。木造家屋の倒壊だけでなくコンクリート構造物の倒壊や崩落、鉄道・高速道路・電気・ガス・水道などの社会インフラで甚大な被害が発生しました。

【図7】出典:気象庁阪神・淡路大震災から20年」特設サイト

阪神淡路大震災に関して、兵庫県南部地震データ集にまとめられています。

「淡路島地震」

 淡路島地震での被害の特徴は、震源から離れた洲本市炬口(たけのくち)地区(震度5弱)で、軟弱な表層地盤により古い家屋に多くの一部損壊被害が発生したことです。


【図8】出典:朝日新聞2013年4月14日

地震による揺れの違い

 震源からの距離が同程度でも、川沿いの低地や平野部など地盤の揺れ易い場所ほど強く揺れ、台地上や山間部など地盤の揺れにくい場所では相対的に揺れが小さかったことが分かります。

【図9】出典:地震本部パンフレット活断層の地震に備えるより

・淡路島地震では建物被害が多く発生しましたが、阪神・淡路大震災のような家屋の倒壊ではなく、屋根瓦がずり落ちた損傷が多く発生しました。また損傷した建物の多くは古い建物で、居住者に高齢者が多いことも特徴です。
・震源域や余震域である淡路島中央部から離れた、淡路島東部の洲本市炬口(たけのくち)地区で多くの被害が発生しました。
洲本市では震度5弱でしたが、炬口地区の表層地盤は洲本川の氾濫堆積物からなる軟弱な地層で、地震動が増幅したためと考えられます。
行政の家屋被害認定の99%が一部損傷で、屋根瓦のかなりの部分が損傷し住めないような状況でも一部損壊認定となっており、多くの高齢者にとって負担となる問題を残しました。

 軟弱地盤での地震被害の増大は、熊本地震北海道胆振東部地震でも発生しました。多くの建物が壊れた北海道胆振東部地震でも同様に、家屋の被害調査で認定の多くは「一部損壊」で、原則、支援金は受け取れず仮設住宅にも入れない・・・ことが報道で取り上げられていました。

「大阪府北部地震」

 大阪府北部地震での被害の状況は、大多数が屋根瓦の損傷や壁面のひび割れなどの部分的な損壊でした。3日後以降の降雨による雨漏れで更に被害が拡大しました。新聞やニュースで屋根がブルーシートで覆われている家か多く立ち並ぶ様子が報道されていました。


【図10】出典:茨木市 大阪北部地震における災害対応について

地震波は短周期が卓越


【図11】出典:朝日新聞

 地震波は短周期が卓越したもので、兵庫県南部地震に見られた周期1~2秒のいわゆるキラーパルス成分は少なかったため家屋の倒壊は発生していませんが、屋根瓦の損傷、ブロック塀の倒壊、水道やガス配管の破損等の被害が発生しました。 

近畿圏で大地震の可能性が高い活断層はどこ?

 地震本部より、活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧(2020年1月1日での算定)が、令和2年1月24日付けで公開されています。

主要活断層の長期評価結果一覧(2020年1月1日での算定)【都道府県別】

 近畿地方で、S※ランク(地震後経過率が0.7以上で、地震が発生する可能性が高い活断層を示す)は以下になります。

4、琵琶湖西岸断層帯(北部)
13、奈良盆地東縁断層帯
18、上町断層帯


【図12】「出典:地震本部」パンフレット活断層の地震に備える

18、上町断層帯

評価 S※ランク
地震規模 7.5程度
30年内発生確率 2%~3%
地震後経過率 1.1~2より大
平均活動間隔 8000年程度
最新活動時期
約2,8000~9000年

13、奈良盆地東縁断層帯

評価 S※ランク
地震規模 7.5程度
30年内発生確率 ほぼ0%~5%
地震後経過率 0.2~2.2
平均活動間隔 約5,000年
最新活動時期 約11,000~1,300年

4、琵琶湖西岸断層帯(北部)

評価 S※ランク
地震規模 7.4程度
30年内発生確率 1%~3%
地震後経過率 【備】
平均活動間隔 約1,000~2,800年
最新活動時期 約28,000~24,00年

 「評価」活断層による今後30年以内の地震発生確率が3%以上が「Sランク」で、※は地震後経過率が0.7以上を示す。

「地震後経過率」最新活動(地震発生)時期から評価時点までの経過時間を、平均活動間隔で割った値です。最新の地震発生時期から評価時点までの経過時間が、平均活動間隔に達すると1.0となり、次の地震かいつ来てもおかしくない状態と言えます。

【備】琵琶湖西岸断層帯(北部)地震発生確率の計算法の違いで、地震後経過率が算出されないが他と同じ計算では、30年内発生確率は3%~20%、地震後経過率は0.9~2.8となる。

 活断層で起きる地震は、発生間隔が数千年程度と長いため、30年程度の間の地震発生確率値は大きな値とはなりません。例えば、兵庫県南部地震の発生直前の確率値を求めてみると0.02〜8%でした。地震発生確率値が小さいように見えても、決して地震が発生しないことを意味してはいません。

・・・引用終わり

 地震発生確率は小さい値にならざる負えませんが、地震の平均的な発生期間に対してその期間を超える(1.0以上になる)地震が再び起こる可能性は高いと言えます。

 上町断層帯では30年内発生確率が2%~3%と低い値ですが「地震発生確率値が小さいように見えても、決して地震が発生しないことを意味してはいません。」が、感覚的に認識し難い面があります。

 上町断層帯では、経過時間/平均活動間隔が1.1倍~2倍より大で、いつ地震が来てもおかしくない状態ですが、最新活動時期が約2,8000~9000年という途方もないスケールで、結局はいつ来るのかは特定することは出来ません。しかし地震は来ないのではなく、必ず来ると言う認識が大切です。

30年内発生確率が2%~3%でも地震は来るのか?

 上町断層帯では30年内発生確率が2%~3%と低い値ですが、決して地震が発生しないことを意味してはいません・・・が今一ピンときません。なぜ地震後経過率が1を超えていて、地震かいつ来てもおかしくない状態と言えるのに、30年内発生確率が2%~3%と低いのでしょうか?

「地震本部」解説:地震発生確率の計算方法より

地震の発生確率は「BPT分布」と「ポアソン過程」にて算出されます。

 主要活断層帯の地震や海溝型地震は繰り返し発生し、その活動間隔は「BPT分布」に従うとして算出されます。(過去の最新活動時期が不明な場合はポアソン過程に従うとされています)